Cultivator - 3

2008/06/06 | しょーせつ

 ガツガツガツガツ。……これだけ豪華な飯が出てくるんだ。きっと何かある。ただならぬ何かがある。人間動物園ではないかもしれんが何かがあるに決まってる! 俺は頭にうんこ詰まっちゃいないからな? 善意でないことは明らかだとわかる! だって俺こんなところに祭られるように座ってるんだもん! だもん! おかしいよ! 120パーセントなんかあるよ! だから俺にできることはスピーディに食ってスピーディに退散することだった。ガツガツ。

 「……ですから、あなたがここに辿り着いたのは、奇跡のようなこと」

 おばさんOの話が進んでいるがごめんなさい! まったく聞いていませんでした! 飯に集中してました! おいしいです! こんな観察されながら飯も食いつつ話聞けって無理だぁべ! なんか女の子ばっかいる理由とか話してたような気がしなくもないがまあガツガツガツ……。

 「わたくしには扇さんを引き止める権利は何もありません。ですが、もしよろしければ……」

 話は続くが飯はそろそろ尽きようとしている。つまり俺の勝利! イエス!

 箸を置き、両手を合わせてパシンと大きく音を立てた。

 「ごちそうさまでした! 美味でした!」

 立ち上がり、先ほどからさりげなく目線を泳がせてうかがっておいた出口の方へ、体を向ける。食後である。体力は万全。静かに足を折り、体をかがめるようにして、つま先を意識。一気に……加速ッ!!

 うおおおおおおおおおおおおガッシャンガッシャンガッシャンガッシャン!!

 走り出した途端に衝撃と騒音。耳をつんざかれたばかりかつんのめり、我が御両足が地面をお離れになりました。にょろりんと宙を舞った俺は我が身を囲むように降ってきた鉄格子に、体当たりをかます形であります。 鉄の棒が迫りマース!! 目の前デース!!! 日本語ムズカ……

 ガキュッッ!!!!

 痛ぇええええええええええ! 痛い痛い痛い痛い死んだ死んだ死んだ! これは死んだわ! だって痛いもん! これは死んだ! 脳天から行ったもん! これは間違いない死にっぷり! いたたたたたた! いってぇええええ! 死んでねぇよクソ早く死ね俺の体!! いてぇんだよ!! 死ね俺!!

 ぎゃおらああああと奇声を上げて耐えること1分。ようやく痛みが収まってきた。やったね! よくねえようんこ脳! いてぇよ馬鹿! なにすんだおばさんO! 待て待て待て! まず何だ? これは何だ? 何に体当たりしたんだ? 鉄の棒? あらまあなんてことでしょう……これは檻っていうんじゃないのかしら? 動物園にあるアレかしらん? ……やっぱり動物園だろうがファッキン!! ファッキンZOO!! 人間動物園!! はいこちら頭をぶつけて痛がっている人間でぇす☆ 死ねようんこ共! 人でなし! うんこ!

 「すすす、すみません……ああ、大変なことに……」

 きーさーまーが、やったんだろが!!! おばさんOさあ……ちょっとぉ、いたいんですけどぉ、どうしてくれるんですかぁ? いったぁいんですけどぉ? なにそれぇ? いきなり檻、落下ですか? 檻ヒューストンですか? 今までのは前フリでしたね? 本性現しやがりましたね?

 どこからともなく悲鳴や笑い声が。くそ……人を観賞用人間だと思ってなめくさりやがって……! 文句と怒声のひとつも浴びせてやろうと思って、起き上がった。

 嘘ぴょん。首が棒と棒の間に挟まってて起き上がれません! 起き上がれません! はい抜けません! 抜けません! これは確かに大変なことだぴょん! 無職21歳首はさまって死亡か!? 死亡なのか? かっこ悪ぃんだよありえねーよ外してくれ外してくれ! 助けておばさんO! 俺の人糞のひとつやふたつくらいならくれてやるからよ! 助けて!

 「ああ……あなたがいきなり走りだしたりしなければ、こんなことにもならなかったでしょうに……!」

 ああ……おばさんOがいきなり檻を落としたりしなければ、こんなことにもならなかったでしょうに……! うんこ大好きか貴様は!? そんなんだからお前の主食は茶色くて異臭発してるんだよビッチ! ビチグソがッ! 飯食った後にかる~く加速度運動を見せてやったら檻を落とすか普通?

 「す、すみません……とりあえず首は、今外して差し上げますので……」

 キレたいキレたい。なんかすごくキレたい気分かも☆ でもダメなの……今ここでキレたら私飼い殺されちゃう! だから、だからね、ちょっとだけ我慢してね俺! 扇流奥義ぃいいいいいいおべんちゃらモード!!

 「はは、ちょっと、若干、微妙に痛いくらいですね。大丈夫です。特に外傷はないと思います」

 「もう……いきなり走りだすんですもの。……本当はこんなこと、したくなかったんですよ。大事な体なんですから……」

 走り出さなかったら動物園に入れなかったというのか? そいつは嘘だろう。急に檻を落とすか、ゆっくり檻を落とすかくらいの差に違いない! だいたい、したくないとかいいながらこんなことやらかしちゃう時点で貴様のうんこ脳は証明済みだおばさんO! 大事な体だと? やはり臓器売買の線だな! 正体をあらわせぇいおばさんO!

 そこに突然、おばさんOの声だったらイヤだなっていうレベルのきゃいきゃいとした声が聞こえたので、もちろん首から上だけを動かして必死にその声のするほう向いてみましたよ俺は!

 「あっはは、無茶する~」

 「ほんとに……き、凶暴なんですね、男の人というのは……」

 可憐なるマドモアゼル達数名だった。

 「こ、こらこらっ。あなた達は座っていなさいと言ったでしょう!? 危ないですよ!」

 はぁい俺あぶないでぇす☆ あぶないから近寄らないでねぇー? ってふざけんなおばさんOッ!

 「大丈夫……ちょっと走り出してみたくなっただけだから」

スマイリーに声をかける。

 「っははは、気分で動きすぎだよ、かなりウケる……はははっ」

 「あう、あわ、あ……ひぃっ!」

 一名逃走。なぁんだやっぱり俺危ないんだ! 思っていたより外見奇怪なのかも? ははは! はなしかけたら逃げられちゃった! やったね! っていうか首いてぇんだよ早く外せおばさんOッ!

 「はい石鹸水です。これを首のところに塗って……」

 「あ、なるほど。頭いいですね」

 って石鹸水だと!? ふざけているのか!? それでこう、ヌルッポンッ! って感じに首を引っこ抜けと? 俺は結婚指輪か? おばさんOさぁ、それ以前にやることがあるだろう……そう、このわけわかんない檻みたいなのを上げてくれよ。そしたら抜かなくても取れるじゃん。ねぇ? ぺちゃぺちゃぺちゃ。

 ってもう石鹸水塗ってますがな! 気持ち悪いからそれ! すごい不快感だからそれ! ぬるぬるするから! いやぬるぬるしなきゃ取れないけどさ……服着てるってのに首から上にかけて石鹸水ぬるぬるですか? ぬるぬるプレイですか? ぬるぬるなんですかおばさんO? 若い男に欲情ですかおばさんO?

 ぬるっ。ぽん。

 「あ、よかったです。抜けましたね」

 あーよかったぬるぬるしたけど抜けた! 結構痛かったからねー、外れてくれたことは嬉しいね。うん。嬉しい。そして俺は身の自由を取り戻したってわけだ。耳のあたりとかぬるぬるするけどね! ああそれにしたって首が自由に動くってすばらしい! なんていう自由!

 両手を広げてくるりと一回転して自由を謳歌してみる。周囲からの視線。視線。視線。 そうでした! 俺檻の中ですから!!! 残念!! 自由ゼロですから!!! ファッキン!! 頭うんこか俺は! 騙したなおばさんOッ!

 「それで僕は……どうして檻の中に入れられているんでしょうか?」

 後半どなり声になりかけたのを必死に我慢だ。どなっちゃいけないときには二種類ある。映画館の中にいるときと、おべんちゃらするときだ。いまは後者だ。

 「……すみません。急に走り出したものですから、逃げられてしまうのかと」

 クッ、見透かされていたか。侮りがたしおばさんOッ、さすがに数々の人肉を解体してきた手練だな。……はあ。短い人生だった。最後はかっこよくキメようと思っていたのに、おばさんOに解体されてHappyEndかよ……。

 「話をお聞きになった上で……お逃げになった。わたくしどもが無茶を申し上げていることは承知ですが、口で言っていただければこんな手荒なことはせずにすんだのですよ」

 まて、なにやら空気がおかしい。俺の200は軽くあるであろうIQでノーミソフル回転させてみよう。話をお聞きになった? そういえば飯食う前になんかいってたな。話は長いから飯を食いながらとかなんとか。もちろん聞いてなかったけどね? だが無茶を言っているどうこうからして、何かお願い事があったんだな。そして、俺が逃げたことをその拒否と受け取り、こうして捕らえたってわけか? われながら天才すぎる推論である。常人には無理なレベルの思考である。

 「待ってください。実はその……話の内容というものがよく掴めていないのですが」

 「はい? ……先ほどご説明したとおりですが?」

 「いえ、だからその……あまりにも食事が美味だったもので、そちらに集中してしまって」

 おばさんOがため息をつく。なんでだよなんでだよ! ため息つきたいのは檻につっこまれてる俺だよ!

 「あっはははは、馬鹿だこいつっ」

 「でも、ちょっと面白いよ」

 さっき逃げなかった方の女の子と、さっき逃げた子とはまた違う子が俺を指差してけたけた笑っている。完全に動物園だな! 君達みたいなマドモアゼルになら笑われても構わないよ! 嘘だけどめっちゃ不愉快だけど!

 おばさんOはその女の子達に手でなにやら合図をしながら言った。

 「もう結構です。各自部屋に戻りなさい。あとの話はわたくしがしておきます」

 「えーもうちょっと見てたい」

 「もどりなさい、チロル」

 「わっかりましたあ」

 立ち上がって俺のそばで人間鑑賞していた数名はもちろん、その後ろで礼儀正しく座ったままだった十名ばかりも、いきなりわいわいとしだす。人間品評会だろうか。俺の行動の気持ち悪さについて点数をつけあうのだろうか? それとももも肉は何円で買いますとかいう話をしているんだろうか? ぜひ耳を傾けたいところだったが、彼女達はそのままホールを出て行ってしまった。

 「ではもう一度お話します。お返事次第では、このように物騒なことをせずにすみますので、どうかご英断を」

 おばさんOがフェイスツーフェイスで説明をはじめるようだった。ふふふ、一対一という状況を作り出したのが貴様の運の尽きよ! 俺のレンジに入ってみろ、締め落としてやるぜ! そしておばさんOを人質に交渉、拘束から逃れ、無事施設から脱出! ハリウッド映画にありそうな牢からの脱出方法を1秒で思いつき、計画は完璧も完璧、超完璧だった。

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