Cultivator - 4

2008/06/08 | しょーせつ

ゴロゴロと音を立てて移動する。ゴロゴロと音がするのは、台車で運ばれているからだ。台車で運ばれているのは、檻を運ぶ必要があるからだ。檻を運ぶ必要があるのは、俺がまだ檻の中にいるからだコンチクショウ!

あの後、おばさんOの話が始まったわけだが、このおばさんO、一歩もこっちに近づきやしなかった。もしや俺の思考が漏れているのかと思わずにはいられなかった。だから叫んだ。

「俺の思考が……読まれている!」

おばさんOは無視して続けたさ。アホみたいなおとぎ話をね。惜しい惜しい。もうちょっとひねりの聞いた話だったら俺も両手両足第三の足をビンビン挙げて騙されてあげたかもしれないが。さすがに陳腐すぎたので途中から「へえ」としか言わないことにしたわけだ。おばさんOの話がいかに瑣末でつまらないものかを強烈に皮肉ったつもりだったがその意図はあのIQ40のおばさんOに伝わったかどうか疑わしい。うん。確かこんな感じだ。

「ですから、このままでは……破綻は時間の問題なのです」

「へえ」

「わかっていただけましたでしょうか。お話は以上です。なにかご質問等は?」

「へえ」

「……それでは扇さん、協力していただけますか?」

「へえ」

いいえと答えれば食われるだろうしはいと答えれば肉奴隷だ。どちらもイヤなので「へえ」だ。禅の極意だ。だというのに! はいともいいえとも答えてないというのに! 俺は釈放されぬまま、こうして連行され中というわけだ。万策尽きたね。俺の負けだ。ドナドナだ。

さっきのおばさんOの話がもし仮に万が一兆が一事実だとしたら俺が今から向かう先は手術台。そして俺はッ! 俺はッ! 不能になる!! そう、おばさんOの目的はうんこではなくちんこだったというわけだ。俺の名乗った仮名は、実は事実を鋭く言い当てていたことになるな。さすがは俺。……とか余裕ぶってる場合ではなくピンチだ。主にちんこの。

ゴロゴロと行く。おばさんOの他3名のムキムキのねーちゃん(チュンリーABCとしよう)がはぁはぁ言いながら俺と檻を乗せた台車を引く。そうだ、この状況をうまく利用すれば……!

「大変そうですね。僕も手伝いましょうか?」

どうだ? どうだこのテクニィック?

「いいえ。申し訳ないですけど、扇さんを今開放することは……わたくしたちの希望を失うことに他ならないのです。このような無礼を働き、申し訳ないと思っておりますが……」

けっ、だめかよ。そうかよ。そんならチュンリーどもにフンフン言わせておけばいいさ。俺の知ったことじゃねーよ。ふんだ。

チュンリーどもがフンフンいいながらがんばって、俺はホールを出、そのまま屋内を移動した。

手術室に運び込もうにも入り口の都合で檻ごと運び込むわけにはいかないだろう、どこかで檻を開けなければならないはず、そこがチャンスだぜベイベ! とも思ってたけどなんかデッカい扉ついてる部屋の前にやってきましただめですだめです! こいつら檻のまま部屋の中につっこむ気です用意周到です! もうだめだ助けてーヒィィイイイ!

ヒィイイイイイ、という叫び声を物質世界にも反映させる。もうやけだぴょん! 防衛機制のひとつ、じゃなかった奥義・退行しちゃうぴょん☆

「ヒィイイイイイイイイイ!」

「お、落ち着いてください扇さん! す、少し奇妙な部屋ではありますが……」

ぃいいいい、なんだと? 奇妙な部屋? 手術室のことか?

現実逃避から瞑っていた目をそっと開けてみる。するとあらびっくり、真っ白ね! なんもない部屋、真っ白な壁と天井が俺をお迎えしてくれました! こりゃあクリーンな手術室かい? やったね! せっかくならきれいな手術室でちんこリムーブしたいもんね! ってそんなわけあるかちんコレクターが! どんな部屋だろうが嫌だよ馬鹿野郎!

「ヒィイイイイイイイイイ!!!」

「あ、うわ……わ」

奥義・退行の効果があったか!? おばさんOめ、引いたな! 引いただろ? 思わずこんなやつ調理して食いたくねー、とか、こいつのちんこはコレクトするに値しねー、とか思ったべ?

「うう……怖いかも……」

って引いてるのおばさんOじゃなくてなんかただの美少女なんすけど! 俺のファニーボイスに思わずびびりまくってしまった様子の彼女。思い出してみれば先ほどホールで俺のことをちょっと面白いと評していた観客のうちの一人だ。一緒に来たわけじゃないから、この部屋の中にいたことになる。しかし、なぜここに? ……手術するときの助手でもやらせるんだろうな。まったく、こんなうら若き乙女にちんコレクトの手伝いをやらせるとは、もはや人間の所業とは思えんぞ! 貴様は悪魔かおばさんO!

ふと見ればチュンリーどもは部屋の外で待機している。……ということは本当におばさんOとこの少女の二人で執行するというのか? マジで? ま、麻酔医とかいないんすかね? 大丈夫っすかね? っていうか普通にやめてくれませんかね? めっちゃグロいんすけどね?

「ごめんなさいね、一番大変な仕事をあなたに任せてしまって。……無事を祈ってます。がんばってね、ミル」

「う……怖いけど、がんばります。おささま」

とか会話したかと思うとおばさんOまですたすたと部屋を出て行く様子でありますよ少佐! 説明なしなの? インフォームドコンセントお元気ですか!? そしてなんということでしょう!? ここから先はこの少女ひとりで執行なのでしょうか? こんな純粋かつ未成熟かつ可憐な少女に残虐な行為をおしつけちまいますのでしょうか? 一番大変な仕事おしつけちゃだめでしょーおばさんO! つまり俺はこの少女にバラされるんですね? ……まあおばさんOよりはマシだ。やったね! いやそういう問題でもねぇかイヤッハー!

おばさんOが外に出ると、檻ごと入ってきたその入り口がゴゴゴゴゴと閉まっていくのでした。なんていうんだ、この丈夫そうな扉は。耐火シャッターみたいなやつね。それがこう、ゴゴゴゴと閉まりますご注意くださいご注意ください。はーい閉まりました無事閉まりました。ますます脱出とかできそうになくなりました誰がどう見ても密室です! 真っ白なクリーン密室の完成です! いまから朱色に染まりまぁす! やったね!

そうしてその部屋には檻の中に入ったままの俺と、おずおずとした少女約1名が残された。

彼女にバラされ血みどろになる自分という光景を想像して再び奥義・退行を発動させそうになったがぐっと堪えることに成功。あのモードに入って現実逃避していては、まだわずかにしろ残っているかもしれない助かる可能性がゼロになってしまうからな! 俺は非人間的なまでの圧倒的勇気で自分の置かれた状況から逃避せず、助かる方法を模索するッ。相手は、少女一人ッ。少女一人なのだッ。

じっとターゲットを見つめる。見た限りでは特に武器の類は持っていないようだ。体格からしても、うん、取っ組み合いになって俺が負ける要素は何一つ見当たらない。くたばっていたとはいえ、こんなに年下の女に遅れをとる気はしなかった。……それにしても、げへへ、かわいい子ですねぇ!

セミロングの髪はこの距離から見て艶やか! 前髪をピンで分けていて。ぱっちりとした目、細めの顎のライン……モデルの卵ってイメージだ。端的に言ってかわいい。ちょっと若すぎるのが玉に瑕だが、いやなかなかどうして……ぐふふ

おばさんOの手下にしておくには惜しいですね、お嬢さん、うちに来ませんか? って言ってる場合じゃねーよちんこ脳! その少女は敵だッ! やれ! やっちまえ! ……やっちまえ!? ぐあああ黙れこのフルスペック童貞! とりあえず檻から脱出することを考えろちんこ脳!

そこまで考えて気づく。そう、先ほどおばさんOに対して考えていた手と同じ手が使えるのではないか? 不用意に檻に近づいた彼女を絞める、脅す、無事脱出、というあれだ。先ほどはおばさんO相手だったからうまみがなかったが、今回は少女だ……ふふっふふふうふふふふ。

現在の状況を半分以上忘れた俺は、ひとり檻の中でニヤニヤ妄想に耽りはじめた。

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コメント (2) to Cultivator - 4

こぼらるど
2008/6/9 月曜日

やはり少女の髪はピンクですか

wh
2008/6/9 月曜日

こういう文章中でメルヘンな髪の色に言及すると萎えるので書いてませんがそんなノリです.

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