spica (by 泉和良) を読んだ
AM ファンなので,ジスカルド氏がラノベ業界に殴り込んだらしい*1という話はキャッチしてたけど時期がはいはいラノベラノベ(笑)という時期だったので手に取ってみたりしてなかったんですごめんなさい. この間,生協で spica がででんと宣伝されてたので,そっちから買ってみた.
最初の 30 ページくらいを買ったその日の昼休みにチョコスティックパンをくわえながらぱらぱらめくってみて,えーこれはどうよ,勢いだけで終わる一発芸ラノベ作家に終わっちゃいそうだなあ,みたいな割と残念な印象を持ち,さらにぐぐってたら信者っぽい人が 「エレ GY は神だったけど spica は残念でした」 とか言ってる感想が目に飛び込んできたので,ふーんと思って,そのまま本棚にてオライリー本とオライリー本の間に挟んで放置した.
と,つくづくかわいそうな扱いをしてきたんだけど,今日電車の中で読むかとカバンに入れて読んだら意外と面白かったよという話.
ハジけてるようで実はすごく表面的なものにすぎなくて*2,目新しいようで実は数年前に使い古された感のあるネタで*3,ラノベっぽいようで実はファンタジー要素ゼロで普通のリアリティある小説で,要するに 「普通の小説」 なんだけどね.
恋愛小説としては良い感じ*4だと思うんだけど,ネームバリューというか,この人はこういう文章を書く人! という印象がマイナスに働いちゃってるなぁと思った. 広報的にもね.別に小細工せずに勝負してもよかったのではないか(その方が一般に受けいれやすく結果的に売れるのではないか)と思いましたです. まあ,普通の小説とはいえ設定が割とアレだし,やっぱ講談社 BOX から出るってことである程度その香りを出しておかないといけないわけで,こうなんだと思うけど.
まあ全体の話はいいや.ネタバレは無粋だし,ネタバレして面白い類の話ではないし,気になる人は自分で手に取れやーということで.
ネタにしたいのは,他でもなく,「究極ナンパマン」 についてなんだ.
作中で出てくる PC ゲームソフトの名前で,物語の鍵とはいわないまでも,割と重要な部分で出てくる固有名詞.
まあ説明しなおすのもめんどいので,作中でヒロインがその 「究極ナンパマン」 について語っている部分とかを引用させていただこう.
軽くなったラックをどけてしまうと、その下から一枚のフロッピーディスクが出てきた。ラベル部分を見るとそこには 「究極ナンパマン」 とサインペンで書かれてあった。
「なんだこれ」 と僕は言った。(略)
「あー懐かしい。それ凄く面白かったの」
「何なのこれ、ゲーム?」
「うん。MS-DOS とかの頃のゲーム。(略)」
「エロゲーなの?」 と僕は訊いた。そのタイトルからはそう想像するのが妥当だろう。
「うーん。どうなんだろ。今みたいなエロゲーとは違うわ。素人が作ったゲームなのよこれ。マウスで描いたみたいなガクガクの絵なの。(略) だのに私、これに凄くハマってたの。体験版だから途中までしか遊べないんだけど、それでも何回も遊んだわ。学校を休んでまでプレーしたのよ」(略)
「どんなゲームなのか詳しく教えてくれる?」
「うーん。そんなに複雑なゲームじゃないから。主人公が女の子をナンパして、成功したらホテルに行くだけ。サウンドノベルみたいにちょっとの選択肢があるだけよ。きっと今やってもつまらないんじゃないかな。あの時代のあの歳で、あの瞬間だったから面白かったんだと思う」
「究極ナンパマン」 という名詞が出てきたときから頭の中にモヤモヤしていた何かが,この文章を読んでいる間にどんどん具体化してきたわけよ. ぶっちゃけると,なんか中華っぽい感じの女の子のビジュアルが俺の頭を駆け抜けた.
ナンパマン?
ナンパマン……?
そういえば小学校のころ遊んだゲームにそんなゲームがあったような……いや,あった,あったよ,実際に名前は 「究極ナンパマン」 だったような……若干エロゲーっぽい描写があるんだけど一般向けの雑誌の付録に入ってて,小学四年生とかだった俺は必死でプレイして,でも中華っぽい女の子で…….
ぐぐった結果.
これだwwwwwwwwww*5
ということで 「究極ナンパマン」 は実在し,実際に作中の説明の通りのゲームで,送金しないと中華っぽい女の子しかプレイできない.
まあね,実際この作品コンビニの名前とかファミレスの名前とかも全部実名だし,コンビニの品物や値段の描写とかどうみてもノンフィクションなので,「究極ナンパマン」 もそのままのものとして存在していたって驚くことでもない.
でもね,読んでいてリアルタイムに 「あのゲームのことだwwwwww」 と頭に浮かんだ俺は完全に勝ち組だと思うんだよ.作者とシンクロした瞬間だったね.
映画とか小説とか,有名どころのコンシューマゲーとかが作中で出てきて,あーそれ知ってるー,というのは普通にあることだけど,こんな古き良きシェアウェアゲームの体験版で 「それ知ってるー」 できるこの快感といったらない! しかもちょこっと名前が出るだけじゃなくて,結構出てくるからね 「究極ナンパマン」.上記引用部分だけで結構長さあるところをみてもわかると思うけどw
こんなところでアイデンティティ発揮してくるとはなあ……さすがジスカルドさんだぜ.
この 「究極ナンパマン」 のくだりから一気に作中世界がリアリティを持ったよ.ものすごい親近感・没入感であった.
もちろん(仮にもラノベなので) 「究極ナンパマン」 に限らずダメな人を狙い打ちにしてる描写は色々出てくるんだけどね.っていうか主人公が DTM やる人で,音楽で気持ちを伝えようとしたりと,かなりジスカルドさんの自伝的小説だし(と思った).
きっと携帯小説で 「援交」 とか 「中絶」 とか 「クラブ」 とか 「バイヤー」 とか 「元カレ」 とか 「退学」 とか 「渋谷」 とか 「(ブランド名)」 とか出てくるとそういう人達が喜んで没入して作品をワッショイするのと,今俺が 「究極ナンパマン」 で喜んでるのは同じ現象なんだと思うけどね.ほんとジャンルっていうのはターゲッティングの手法に過ぎないよ.優劣を云々とかバカらしい.ナルシシズム的には携帯小説・ラノベプギャー,古典わしょーい,とか思わないでもないけど,それはそれとして自覚的にやるべき.
やるといえば 「究極ナンパマン」 をプレイしたい人は普通にベクターで配られてますのでどうぞ.
過剰な期待はせずにプレイし,そしてたったこれだけの内容のフリーゲームのことを俺が 10 年経っても覚えていて,小説を読んで 「あのゲームのことだwww」 とシナプスが繋がったときのびっくり感をしみじみ感じてください.
別に難易度高くないと思うけどクリアできない人向けに東大生の超越的知能をフル回転させて編み出したナンパ法を伝授しますと(ここで中指でメガネをくいっとやる),
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挨拶は お茶 -> おごるよ が最強
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趣味は やめときます -> テニス -> 実は下手なんだ が最強
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「話す」 「みつめる」 「さわる」 をそれぞれ(やばそうなの除いて)総なめして好感度 70 を目指す
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好感度 70 になると 話す -> くどく -> 俺についてこい で連れ歩けるようになるので,それで 90 目指す
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90 越え状態で俺についてこい選ぶとホテル直行コマンドが出るのでそれでクリア
なんだけど実は,俺についてこい時に 「なんだか強引あるね」 と言われるイベントや連れ歩き時のイベントでは好感度が何度でも上がるので,
- お茶おごる,名前聞く,友達になる
- ひたすら俺についてこいで好感度 70
- 公園で星をみたりバーで乾杯したりをループで 90
- ホテル直行^^v
というのが最もシンプルというか,面倒な暗記を必要としない解法である.俺についてこいと言い続けるだけでホテル同行するとかどんだけビッチなんだよ.
ほんと 「あの時代のあの歳で、あの瞬間だったから面白かったんだと思」いますよ俺も. 俺にとっての 「あの歳」 は 10 歳で,作中ヒロインにとっては 15-16 歳だけどな! ついでにヒロインは 「学校を休んでまでプレーした」そうだしな.さすがに究極ナンパマンでそれはないわw
まあ実際にプレイしてもらうと 「究極ナンパマン」(笑) という感じが味わえると思うので,味わったら次は spica を読んで「究極ナンパマン」出てきすぎだろwwと吠えましょう.
どれくらい出てきまくるかというと,本文の最後から二文目にも出てくるくらい出てきます.
小説自体とは違うレベルで楽しめた作品であった.
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